2025/01/03

国会前で無言の意志表示
 作家の澤地久枝さんら250人
「戦争をしてはいけない。この一念です」

東京・永田町の国会議事堂正門前で1月3日、作家の澤地久枝さん(94)ら約250人が「無言のスタンディング」を行った。軍事、防衛の拡張を打ち出す現政権への抗議の意志表示。澤地さんは「NO!WAR」のプラカードを手にしながら、鋭いまなざしを国会議事堂に向けていた。
「アベ政治を許さない」。こんなスローガンを掲げた澤地さんが、国会前の歩道に立ったのは2015年7月18日。安倍政権が強行しようとしていた安全保障関連法案に異議を唱えて立ち上がった。成立すれば、集団的自衛権の行使が可能になるなど、戦後日本の安全保障政策の根本を揺るがす重大な局面。ジャーナリストの鳥越俊太郎さん、作家の落合恵子さんらが賛同し、5000人(主催者発表)以上が国会前に駆けつけた。
澤地さんの呼びかけは、全国一斉の行動だった。このスローガンを俳人、金子兜太(18年2月、98歳で他界)さんが揮毫(きごう)してインターネットのサイトに掲載。当日はメイン会場の国会前をはじめ、各会場で有志が「アベ政治を許さない」と記された大判の紙を掲げた。反響は大きく、4カ月後の11月3日の文化の日に再開され、以後、毎月3日、国会前での行動が続いている。
「2025年。戦後80年の年始めはどんな思いで国会前に立ちましたか」。国会前でのスタンディングを終えた澤地さんは、記者の問いかけに「戦争をしてはいけない。この一念です」と答えた。その後のミニ集会では、「(新春は)私たちが自分たちの手でお酒をつぎたい。日本の政治というものは混迷を極めていてこのままではろくな方向に行きません。せめて自分の意思というものをどこかにはっきりさせたい」と話した。
一方、日米安全保障条約の廃止などを唱える市民グループ「アンポをつぶせ!ちょうちんデモの会」は元日、東京都武蔵野市吉祥寺の繁華街などで通算889回目のデモ行進をした。
デモはベトナム戦争中の1967年7月15日、数学者でもある社会運動家、もののべながおき(物部長興)さんの提唱でスタート。当初は「ベトナム反戦」を訴えて月2回実施していたが、戦争終結(75年4月)後は、毎月15日と元日に行っている。もののべさんは96年に亡くなったが、現在は元私立高校教師の川手晴雄さんらが継続している。
能登半島地震の被災地復興など、困難な課題が山積しているなかで迎えた正月。澤地さんが言うように、市民が主体的に行動することが必要だ。【明珍美紀】


「NO!WAR」のプラカードを手にする澤地久枝さん(中央)=明珍美紀撮影




2024/11/29

舞台「冥王星の使者」 東京・新宿で上演
  劇作家の高取英さんの作品がよみがえる

 劇団「流山児(りゅうざんじ)★事務所」の舞台「冥王星の使者」が東京・新宿の「新宿スターフィールド」で上演されている。太平洋戦争の開戦前夜、ある宗教団体が弾圧された事件に義経伝説を絡ませた奇想天外な物語だ。
 アマテラスに奪われた地上の統治権を取り戻そうとする宗教団体が「不敬罪」で弾圧された。京都の下宿で、平安末期から鎌倉初期にかけての武将、源義経の恋人といわれた静御前の夢を見ていた学生の高橋は、いつの間にかこの教団の世話をすることに。そして教団は国家権力との全面戦争へと向かっていく――。
 作者は劇作家、演出家の高取英さん(1952~2018年)。詩人、劇作家の寺山修司の演劇実験室「天井桟敷」の活動に関わり、83年の寺山の他界後は、「暗黒の宝塚」とも称された「月蝕(げっしょく)歌劇団」を旗揚げした。「冥王星の使者」は、作家の故高橋和巳さんの代表作の一つで戦前から戦中にかけての宗教団体への弾圧を描いた「邪宗門」に着想を得た。流山児★事務所の前身の「演劇団」の解散公演(84年)のために創作したという。
 今回は、流山児★事務所の創設40周年記念として、再び舞台によみがえった。同劇団代表で高取さんと親交を深めた流山児祥さん(77)は「時間とは、歴史とは、宇宙とは、人間とは何か。小劇場の中で小宇宙を体感できる」という。12月1日まで。詳細は流山児★事務所のホームページ。【明珍美紀】


「冥王星の使者」の1場面=横田敦史さん撮影




2024/11/23

劇団未成年
「死神からの贈り物」東京・築地で
  青春時代にタイムトリップ

 俳優の水島涼太さん(73)率いる劇団未成年の新作「死神からの贈り物」が東京都中央区築地3の築地本願寺ブディストホールで上演されている。シニアの男性が青春時代にタイムトリップするファンタジーだ。
 貧乏神にとりつかれたはずが、手違いで死神によって「黄泉(よみ)の国」に送られてしまったジュンタローが主人公。「そのおわびに」と、自分が一番輝いていた青春時代に戻してもらい、当時、思いを寄せていた女性に、伝えることができなかった言葉を口にする――。
 「戦争を知らない世代だった僕らがシニア世代になった。物質的には豊かになったが、それは本当の幸せなのか。かつて自分の中にあった感性を取り戻そう。そんな思いをこの作品に込めた」と水島さんは話す。
 水島さんは1978年、NHKの銀河テレビ小説「ふるさとシリーズ2上野駅周辺」(山田太一さん作)で主演デビュー。以来、数々のドラマや映画に出演してきた。2007年には有志と同劇団を旗揚げし、家族や老いの問題などをテーマに上演を重ねる。今回の舞台では自らジュンタローを演じ、俳優の水沢有美さんが死神役で客演している。
 11月24日まで。詳細は劇団未成年のホームページ。【明珍美紀】


「死神からの贈り物」の1場面。水島涼太さん(左)が主人公のジュンタローを演じ、俳優の水沢有美さん(中央)が死神役で客演=東京都中央区で




2024/10/04

童話作家の山崎陽子さん主宰
 「朗読ミュージカル」 東京で公演

 宝塚歌劇団出身で童話作家の山崎陽子さん(88)が脚本などを手がける「朗読ミュージカル」の公演が10月2日、東京の内幸町ホールで行われ、声楽家の森田克子さんや箏曲家の澤村祐司さんらが出演した。
 森田さんが上演した「ひとりも愉(たの)し」は、一人暮らしの琴子が主人公。40歳で夫を亡くして家族のために必死で生きてきたが、2人の子どもは独立し、孫も生まれた。「今日からは母でもバァバでもなく1人の女として生きていく」。80歳を迎えた日にこう宣言した琴子の快活な姿を歌や語りで表現した。
 当日は、朗読と箏で紡ぐ物語として「葉桜のころ」も披露された。太宰治の「葉桜と魔笛」をもとに山崎さんが脚色。デパートのエレベーターガールの牧子が、絶え間なく乗り降りする人々とのつかの間の出会いを描いた作品だ。森田さんの朗読に、箏曲家の澤村祐司さんによる演奏を合わせ、しっとりとした箏の音色が響いた。全盲の澤村さんは東京芸術大大学院で邦楽を修め、伝統的な古典曲(地唄)の演奏をはじめ、作編曲に取り組んでいる。
 朗読ミュージカルは、文学と音楽、演劇を融合させた舞台で、山崎さんが1990年から続けている。詳細はオフィス・ディーバのホームページ。(明珍美紀)


宝塚歌劇団出身で童話作家の山崎陽子さん(88)が脚本などを手がける「朗読ミュージカル」の公演が10月2日、東京の内幸町ホールで行われ、声楽家の森田克子さん=写真左=や箏曲家の澤村祐司さん=同右=らが出演した。




2024/08/28

人形遣い、俳優のネヴィル・トランターさん
東京のプーク人形劇場で連続講座

 何体もの人形を使い分けるなど卓越した技術で知られるネヴィル・トランターさん(68)=オランダ在住=による人形劇の講座が東京都渋谷区代々木2のプーク人形劇場で開かれている=写真。人形と共に世界各地で公演してきたトランターさんはこの夏、人形遣いとしては最後の舞台を東京で披露し、その締めくくりとして同講座で、自身の経験や技を伝えている。
 オーストラリア出身のトランターさんは大学で演劇を学んだ際、人形劇と出合い、有志と小さな人形劇団を設立した。オランダの演劇祭で見た大人向けの人形劇に魅了され、1978年に同国に移住した。複数の人形を自在に操りながら、自身も俳優として出演する。脚本や演出も手がけ、風刺とユーモアにあふれる独自の舞台を追求してきた。だが、ひざを痛めたこともあり、今年のジャパンツアーを「ラストステージにする」と決意した。上演した「ユビュ王」は1896年に初演された戯曲が原作で、「絶対的な権力」を求めるユビュとそれを取り巻く人々の物語。フランスで初演後、オランダなどを経て日本へ。プーク人形劇場での公演(8月22~25日)が最後となった。
 「人形のPOWER(パワー)」と題する講座では、舞台における人形と人間の役割や演劇空間の使い方などについて解説し、人形を使った演習もある。トランターさんは「人形たちはわれわれ人間の内面を上手に演じてくれる。人形だからこそ伝わるものがある」と語り、今後は演出や後進の育成に力を入れるという。講座は8月30日まで。問い合わせはプーク人形劇場(03・3379・0234)。【明珍美紀】




2024/06/17

辛淑玉さんが東京・新宿の高麗博物館で講演
「ニュース女子」訴訟を振り返る

 人材コンサルタントの辛淑玉(シン・スゴ)さんによる講演会が今月、東京都新宿区の高麗博物館で行われた=写真。タイトルは「『下心のレイシズム』に抗う」。東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の番組での発言をめぐり、制作会社の旧DHCテレビジョン(現虎ノ門テレビ)などを相手取り提訴した「ニュース女子」訴訟で昨春、勝訴が確定した辛さん。講演では5年余に及ぶ裁判闘争を振り返り、「黙っていたら人種差別的な番組を認めることになる。この社会で声を上げるには闘うしかなかった」と語った。
 問題となった番組は2017年1月2日に放送された。沖縄県の米軍ヘリパッド建設反対運動の現地リポートを放映した後、司会者は、辛さんが共同代表を務める「のりこえねっと」(正式名称は「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」)が「参加者に日当を払っている」などと根拠のない発言をした。
 「私がランドマークになったのは(デマの内容が)地上波で放送されたから」と辛さんは分析する。地上波に乗ると「テレビがお墨付きを与えた」となり、それを正しいと思い込む人が出てくるためだ。また、反戦の声を最も上げる「沖縄たたき」をするために「私がターゲットになった」とも話した。
放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会が人権侵害を認定(18年3月)し、MXは謝罪(同7月)したが、制作会社や番組の司会者は認めようとしなかったため、やむなく提訴に踏み切った。ネット上の「暴力」をはじめ深刻なハラスメントに遭った辛さんは、一時期、ドイツに滞在するなど苦しい日々を過ごした。
 「記録に残すために裁判を闘った。これからは人々の記憶に残していくために、権力の暴走を抑えるために闘っていきたい」と辛さんは言い、「理解し合える人たちとつながり、その輪を広げていくことでしか社会は変わらない」と力を込めた。
高麗博物館では、2005年から在日コリアンによる連続講座を実施している。イベントなどの日程は同博物館のホームページで。(2024/06/17)




2024/05/05

ジャズ演奏家の外山喜雄さん 母校の高校生たちと初共演
 若い世代に「夢をあきらめないで」とエール

 トランペット奏者の外山喜雄さん(80)が4月29日、母校の早稲田大学高等学院(東京都練馬区)で吹奏楽部の部員と初共演した。「高3の時にデキシーバンドを組み、私のジャズ人生が本格的に始まった」と感無量の面持ちで語った。
 早大学院は今年で創立75年。この日はOBらが集まる「ホームカミングデー」で、外山さん率いる「外山喜雄とデキシーセインツ」が同窓会の総会に招かれ、講堂のステージで「A列車で行こう」などジャズの名曲を披露した。後半には吹奏楽部の部員が登場。高校生たちは初め緊張した様子だったが、外山さんが笑顔で話しかけて雰囲気をやわらげ、「セカンドライン」「聖者の行進」を一緒に演奏した。
 早稲田大に進学した外山さんは、同大のサークル「ニューオルリンズジャズクラブ」に入り、そこで妻恵子さんと出会った。卒業後、結婚した2人は1967年、移民船「ぶらじる丸」に乗って米国へ。外山さんの憧れのジャズメンで、「サッチモ」の愛称で知られるトランペット奏者、歌手のルイ・アームストロング(1901~71年)の故郷、ルイジアナ州ニューオリンズで武者修行するためだ。外山さんはトランペット、恵子さんはピアノとバンジョーの腕を磨き、帰国後の75年、デキシーセインツを結成した。東京ディズニーランド(千葉県浦安市)をはじめ、公演で各地をめぐる外山夫妻がニューオリンズを再訪したのは90年。「ジャズの聖地であるこの街で銃による暴力が増加していた」と外山さんは振り返る。「銃に代えて楽器を」と思い立ち、94年にルイ・アームストロング・ファウンデーション日本支部(現在の「日本ルイ・アームストロング協会」)を設立し、子どもたちに楽器を贈る活動を始めた。2018年にはニューオリンズの音楽祭で「スピリット・オブ・サッチモ・アワード生涯功労賞」に選ばれた。  夫妻は80代になったいまも、ジャズにどっぷりつかった生活だ。「若い世代に伝えたいのは夢をあきらめないこと」と力を込めた。【明珍美紀】
●児童書「ルイ・アームストロングのことばと人生」(外山喜雄・外山恵子監修)が4月にポプラ社から刊行。7月6日に東京で日本ルイ・アームストロング協会30周年記念パーティーが開かれる。
詳しくは同協会の公式ウエブサイトで。






2024/03/19

 「筒井康隆笑劇場」 東京で上演
  高平哲郎さんが企画、演出

 不条理やブラック・ユーモアなど、作家の筒井康隆さん(89)が描く世界観を舞台化した「筒井康隆笑劇場」が3月8~14日、東京都渋谷区のシアター・アルファ東京で上演された。
筒井さんと親交を重ねる劇作家、演出家の高平哲郎さん(77)が「笑いの実践集団」の第一弾として企画した。
 筒井さんの著書を長く愛読してきた高平さん。筒井さんが「ことば狩り」などに抗議して“断筆宣言”をした翌1994年、東京で「筒井康隆断筆祭」が開かれたときは、高平さんが演出を手がけ、ジャズピアニストの山下洋輔さんらが出演した。
 「自分たちと異なるものは排除するという風潮は、昭和の時代からまったく変わっていない」(高平さん)といい、筒井さんが皮肉や笑いをまぶして社会に突きつけたものを表現したのが今回の「笑劇場」と言える。第一弾では、「一について」「乗越駅の刑罰」「ヒノマル酒場」など、筒井さんの短編からナンセンスやパロディーなどの要素が強い6作品を選び、寸劇や朗読などで紡いだ。俳優の小堺一機さん、竹下景子さん、松田洋治さんらが出演し、「大人のエンターテインメント」を披露した。今後も「筒井ワールド」を題材に「笑いの実践集団」の活動を続ける予定だ。【明珍美紀】






2022/10/07

サルトルの戯曲
俳優のサヘル・ローズさんがヒロイン役

 仏の哲学者、ジャン=ポール・サルトルの戯曲を原作にした劇団「新宿梁山泊」の舞台「恭しき娼婦」が東京都中野区の「芝居砦・満天星」で上演中だ。イラン出身の俳優、サヘル・ローズさん=写真=が、女性蔑視や白人至上主義などの問題に視点を置いたこの作品を「私の物語」と受け止め、ヒロインを演じている。
 酒に酔った白人の男性が黒人を殺すところを目撃した女性が、街の有力者から正当防衛だとの偽証を求められた。舞台では、女性が書類にサインするまでの心理状態や、自らも差別を受けて苦悩する姿が描かれる。
 同劇団では2018年に続く再演。今回は、9月にポーランドのグダニスクで上演した後の特別公演だ。同劇団代表で在日韓国人の金守珍さんは「自由や尊厳の侵害の問題にサルトルが真っ向から向き合った。ロシア軍のウクライナ侵攻など、いまなお戦争や民族差別が起きている時代にこの作品のメッセージをアピールしたい」という。10月9日まで。






ウクライナの隣国、ハンガリーから一時帰国
オーボエ奏者、桑名一恵さん一家がチャリティー公演

ハンガリーとの国境付近のウクライナで、ロシアの侵攻により困難な生活が続く人々を支援しようと、ブダペスト在住のオーボエ奏者、桑名一恵さん一家によるチャリティーコンサートが8月9日、東京都立川市のスタジオ「LaLaLa」(ラララ)で開かれた。ハンガリーに接するウクライナ西部、トランスカルパチア地方はハンガリー人が多く住む地域だが、「ロシアの侵攻後は首都キーウ(キエフ)などから避難してきた人もいて、生活は困窮している」という。
 東京出身の桑名さんは、桐朋学園大管楽器嘱託演奏員などを経て2000年秋、20 代後半でハンガリーに拠点を移した。この夏は夫でハンガリー人のホルン奏者、 パラティヌス・フェレンツさん(45)と高校生の長男(18)を伴って一時帰国し、「日本人にも現状を伝えたい」と今回のチャリティー公演を思い立った。演奏には、ホルンを吹く長男も加わり、ハンガリーの名曲の数々を奏でた。「隣国の戦争に対し、例えば息子が通う高校では生徒たちが自主的に支援活動を始めた」と桑名さん。「自分にできることを考え、一歩踏み出すことが大事」と話した。コンサートの収益は、ハンガリーの「ヴァルダ文化伝統保存協会」に寄付する予定だ。(明珍美紀)





ランディ・バックマンさん
再会したグレッチで演奏
東京アメリカンクラブで

盗難の被害に遭ったギターが日本で見つかり、45年ぶりに「再会」したカナダのギタリスト、ランディ・バックマンさん(78)が7月2日、東京・麻布台の東京アメリカンクラブでライブ演奏を行った。探し求めていた米グレッチ社の1957年製のギター(6120チェット・アトキンス)を披露し、参加者たちと喜びを分かち合った。
この日は、米国の独立記念日(7月4日)にちなんだ同クラブの祝賀イベントがあり、バックマンさんが特別ゲストとして登場。さっそくグレッチのギターで60年代の懐かしいヒット曲「シェイキン・オール・オーバー」を感無量の様子で奏でた。その後は別のギターに代えたが、演奏が終わるまで自身のそばに置いていた。ライブの後半は日本で活動する米国出身のギタリスト、マーティ・フリードマンさん(59)と共演。「子どものころから憧れの存在だったランディのギターが、僕の住む日本で見つかるなんてまさに奇跡」と言い、「これを機にランディと日本のミュージシャン、市民との交流が深まってほしい」と話した。

このグレッチは、バックマンさんがロックバンド「The Guess Who(ゲス・フー)」時代の77年、カナダ・トロントのホテルで盗まれた。その後、ファンが木目の特徴などを手がかりにインターネットを駆使して探したところ、日本人ミュージシャン、TAKESHIさんが手にしていた映像を発見。東京都内の中古楽器店で2014年に購入したものだった。 在日カナダ大使館で1日、ギターの引き渡しが行われることになり、バックマンさんが来日。当日は、同じ職人が製作したギターをTAKESHIさんにプレゼントした。
現在、バックマンさんのグレッチをめぐる長編ドキュメンタリーの制作が進んでおり、東京アメリカンクラブの会員がフィルムプロデューサーとして関わっている。